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6)SFの未来に向けて

【スライド 36/45】 SF書評に問題がある?


【スライド36】SF書評に問題がある?
【スライド36】SF書評に問題がある?

インタビュー取材する前は、SFの書評に問題があるのではないかと思っていた。編集者はミステリー書評ばかり読み、SFの書評やSF評論家を軽視しているのではないか、と思ったのである。
だがその仮説は(部分的には)間違いだったようだ。少なくとも編集者たちはSF書評を読んでいる。だが心に届いていない。
 SFが売れないと思われてしまうのはなぜか。僕は最初、SF書評に問題があるんじゃないかと思っていたんです。文芸一般の編集者はSF書評をあまり読んでいないんじゃないか、だから面白いSFが出ても気づかないんじゃないか。

 ところがインタビューしてみると、実は一般文芸編集者もSF書評をたくさん読んでいるということがわかったんです。それなのに、このSF作家に仕事を頼もうとは思わない。そこがなぜなのか、僕にはわかりませんでした。角川の宍戸健司さんがいったことでこれは非常に重要だと思った指摘があります。早川書房から最近は『SFが読みたい!』という年間SF総括ガイドが出ています。ミステリーにおける『このミステリーがすごい!』に相当する本ですね。こちらにもSF関係者が選んだ年間ベスト10が載ります。ところが、このベスト10は比較対照するものがないから、そのまま信じていいかわからないというわけです。なるほどと思いました。書評や評価に対する信用度が、SFの圏外から推し量りにくい構造なのです。それではいくら絶賛書評が新聞や雑誌に載っても効果はありません。たぶんSF業界以外の人がSFを書評するようにならないと駄目なのです。




【スライド 37/45】 「なんでもSFという」戦略?


【スライド37】 「なんでもSFという」戦略?
【スライド37】 「なんでもSFという」戦略?

大森望氏は意識的にヤングアダルト作品をSF枠に取り込んで評価している。これはヤングアダルト読者層と本格SFの読者層をリンクさせようという戦略なのだろう。
確かに本格SFの読者たちは読書の幅を広げたかもしれない。だがヤングアダルト読者層にはほとんど影響を与えていない?
 もうひとつ、以前から疑問に思っていたことがあります。いまは「なんでもSFという」のがSFの風潮ではないでしょうか。面白い作品があると「あれもSFだよ、これもSFだよ」といって、SFとは呼ばれていないものでも積極的にSFに取り込んでいく。特にヤングアダルト・ライトノベル小説に対してこの傾向が顕著だと思います。

 もちろんこの運動は、SFファンの人にとっては読書の幅を広げることに役立ったと思うんです。ところがメディアワークスの人に聞いてみたところ、ヤングアダルト・ライトノベル読者の人たちは、「なるほど、おれたちの読んでいるのはSFなのか、じゃあSFも読もうか」とはならないということらしいんですね。電撃文庫の読者にアンケート調査をしたところ、電撃文庫はハヤカワ文庫SFと読者層がほとんど重ならなくて、読者は他のライトノベルのレーベルを読んでいるという結果だったそうです。ですから、「なんでもSFという」戦略は、確かにSFファンの楽しみを増やすことには貢献したけれど、SFファンじゃない人たちの楽しみを増やしているわけではないんじゃないか、と思ったんです。




【スライド 38/45】 SFファンは他ジャンルの本を読むか?


【スライド38】SFファンは他ジャンルの本を読むか?<br>
【スライド38】SFファンは他ジャンルの本を読むか?

作家ではなくジャンルで読む読者が増えてしまうと、作家側はやりづらいと思う。
角川・吉良氏の発言
 SFファンはどのくらい他ジャンルの本を読むか。できれば作家で読んでほしい。作家ではなくジャンルで読む読者が増えてしまうと、作家側はやりづらいと思います。




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