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【スライド 11/45】 ファースト・コンタクト!


 このスライドに示したのはSF作家のロバート・J・ソウヤーさんですね。SFマガジンから無断で写真をコピーしてきました(笑)。僕もソウヤーさんの本は大好きで、翻訳された本はほとんど読んでいるんですが、実をいうとこの写真はすごく違和感があったんです。「CONTACT Japan」という合宿形式のコンベンションがあるんですね(http://www.ne.jp/asahi/contact/japan)。SF作家や評論家、ハードSFファンの方たちが集まって、地球人側と宇宙人側に分かれて、それぞれ本当に現実世界で異星人と地球人が出会ったときにどういうコミュニケーションをしていけばいいかということをシュミレートする、そういう集まりです。まあ学術的な集まりではあろうと思うんですけれども、この写真だけ見ると僕は非常に違和感があるんですね。この写真はソウヤーさんを先頭にして、ヒッストという異星人のふりをしながら、いままさに入場して来て地球人側とコンタクトをしようとしているシーンなんですけれども、これだけ取り出すとなんだかすごく違和感があるんです。この違和感は、実は僕が感じているSFへの違和感に近いところがあるのではないか。とにかく僕のような作家とSFファンの人と何かうまくコンタクトができるような方法を模索したいということなわけです。

(*註:違和感については「2.講演スライド」の下記スライド11のメモに詳述、47ページ。また「講演後の反響に対して」でも触れる)

【スライド11】ファースト・コンタクト!
【スライド11】ファースト・コンタクト!

ファースト・コンタクトとは人間が他の知性体と初めてコミュニケーションを交わす状況のことで、SFでよく書かれるが、実際の研究者たちもまじめに考えている。
地球人側と宇宙人側に分かれてコンタクト・シミュレーションをおこなう集まり。SF関係者の間では人気・評価が高く、現役SF作家も多数参加。合宿形式。昨年はカナダのSF作家ロバート・J・ソウヤーが宇宙人側の設定を引き受けた。
この写真は「SFマガジン」というSF雑誌に掲載されたもの(無断転載)。地球人側と宇宙人側が初めて対面する場面。宇宙人ヒッストの格好で入場してくるソウヤーたち。
これを見て、どこか居心地の悪さ。違和感。

なりきっている姿が端から見て少し恥ずかしい感じがするが、まあ当人たちは楽しそうだからそれについてはとやかくいわない。
なぜ彼らはこれを許容できるのに、『パラサイト・イヴ』の怪物の描写には批判的なのだろう? 宇宙人を人間が演じているという段階で、すでに宇宙人を人間に引き寄せて考えている。それは彼らの嫌う「擬人化」と根本的に同じなのでは? ロボット研究者も「人間は人間以外の知性を理解することは不可能。
だがコミュニケーションはできる」といっていた。人間が宇宙人の知性を設定し、その通りに振る舞うこと自体が間違っているのでは? なぜこれは許容できるのか? 私の感覚とどこか何かがずれているようだ。どこが?




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