表紙はじめに講演内容質疑応答反響に対して資料請求先


【スライド 10/45】 お互いの違和感をぶつけあおう


 さて、そういう防御手段を取りながら、SFについてもいろいろと考えていったわけです。そこで思ったのは、どうもSFの内部と外部とのコミュニケーションがうまくいっていないのではないかということと、内部同士、外部同士のコミュニケーションもうまくいっていないのではないかということ。まあ、それで「瀬名秀明」というものを使って、コミュニケーションをうまくできないかと、そう思った次第なんです。

 「SF Japan」という雑誌の2001年春季号に、「SF作家への長い道」という座談会が掲載されています(出席者:森下一仁、浅暮三文、北野勇作、鯨統一郎、森岡浩之の各氏)。この中で新進SF作家の方たちが、SFの魅力はと問われて「ふところの深さ」「なんでもあり」と、SFが自由であることを強調している。いったいどこの話なのだと僕は思いました。SFの世界の住人になってしまえば、これほど自由な国はないのかもしれません。でも、僕にとってSFは本当に得体の知れない国で、常に僕の心を束縛する国なんです。いったん外に立ってしまったら、いくら勉強しても永遠に部外者扱いで、わかっていないといわれそうな気がします。このあたりは看護学によく似ています。看護婦(看護士)で臨床経験を持たない限り、外の人が何をいってもわかっていないと諫められてしまう。

【スライド10】お互いの違和感をぶつけあおう
【スライド10】お互いの違和感をぶつけあおう

ウェブのアンケート調査では「なぜ瀬名さんこそSF観にこだわるのか?」といった質問が寄せられた。
それは、SFと科学には感謝しているから。
だが一方で、SFと科学には裏切られ続けてきたという思いもある。冗談がまったく通じない世界でもある。「SF Japan」の新進作家座談会で、みんな「SFは自由だ」と語っている。いったいどこの世界の話なのだと思う。パラレルワールドの話か、それともその世界の一員になってしまえば居心地良いのか? 

勉強しても永遠に部外者。わかっていないといわれ続けそうな気がする。このあたり、看護学に似ている。

ロボット工学の研究者たちは、このままでいいのかという思いから学会でパネルディスカッションを重ねている。また一線の研究者が個々人で打開策を見つけ、実行に移している。その精神は素晴らしいので、自分もそうしたいとの思い。



backnext