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【スライド 22/45】 そのうち「科学ノンフィクション」はどのくらいですか
あと、僕自身がサイエンスライティングに興味があることもあって、科学ノンフィクションの読書量について訊いてみました。たぶん一般的には、SFファンの人は科学には強いというイメージがあると思いますね。
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サイエンス・ライティングに興味があるので、それに関しての質問。科学書が本当に読まれていないことを実感。意識的に読み込んでいる人以外は、ほとんど手に取っていないようだ。SFファンはそれでも月に1?2冊程度読んでいる人も多いが、全体の読書量の中で占める比重は小さい。SF考証にこだわるSFファンは、この程度の読み込みでツッコミが可能なのだろうか?
SFファンの方は月に1冊から2冊というのがいちばん多いですね。僕はもっと多いのかなと予想していたのですが、ハードSFファンの方なんかはこの程度で大丈夫なのか、ちょっと疑問です。小説に対する科学的なツッコミは、月に1冊か2冊の科学ノンフィクションを読む程度で大丈夫なのか? 僕はちょっとわからないのですけれども、実際はこの程度です。
それから、「いいえ」と「わからない」は、ほとんど読まない方と意識的によく読まれる方に二極化している。
ただ、総じてSF小説よりも圧倒的に読み込んでいる量が少ないわけで、SFファンであっても科学ノンフィクションはあまり読まない。ましてやSFファンでない人はほとんど読まない。やはり科学ノンフィクションは非常にきびしい出版状況だということが読み取れる結果です。少し残念で、どうにかして変えていきたいとは思いますね。
【*註】
この分析に対しては、セミナー終了後に反論があった。「SFマガジン」などでSF評論・科学解説を書く野田令子氏(合宿企画「瀬名秀明先生のSFに対するアンビバレントな思いを聞いて」の司会を担当)は、自身のウェブ日記(2001年5月19日付)で次のように書いている。「SFセミナーでの瀬名さんの公演で「SFファン(を自認する人)は何故あまり専門書を読まないのか」という問いかけがありましたが、私(多分ハードSF好き)の場合は生物系は論文を読むし、その他の分野なら信頼のおけるweb siteを読むので、どうしても遅れの出る(特に私は文庫待ちするし)本よりそっちを優先してしまう、というのが答えでしょうか」これについてコメントしておく。読み物としての「科学ノンフィクション」(book lengthの形態)と、生の情報としてのウェブ文書では性質が違うと思う。情報だけ手っ取り早く知りたいのなら、確かにウェブや論文は有効である。だが、自分の専門分野以外の論文を、本当に読みこなすことができるだろうか。同じ生物系といっても、進化学を専門とする研究者がいきなり脳科学の論文を理解するのは困難だろう。
(http://www.geocities.co.jp/Technopolis/1857/old0105b.html)
著者の主張や思いが込められて構成にも気を配られた科学ノンフィクションには、別の楽しみもあるはずだ。野田氏は速報性と信頼性のみをここで重視しているが、書籍でしか知り得ない(あるいは理解し得ない)情報もまだまだ多い。そして、ここが重要なことなのだが、書籍はそもそも著者の考えに触れるために読まれるものである。ハードSF的なツッコミとは、何も第一情報からのみおこなわれるのではないはずだ。
また、大学ではウェブ環境が整備されているが、一般家庭で利用する場合は依然として数多くの制約があることも忘れてはならない(ブロードバンド時代になっていくらか解消されつつあるが)。学会のウェブページに掲載されている論文のPDFファイルは一般人にとって閲覧不可能であることも多い。研究者がウェブを優先するのはごく自然な行為だと思うが、それが一般ではないのである。
そして、もしウェブで充分だというなら、科学ノンフィクションの存在意義そのものが否定されることになる。野田氏は分子進化学の研究者でもあるが、科学者がこのような発言をするのを見るのは悲しい。まずは科学者自身が科学ノンフィクションを積極的に読み、そして書いてゆくことが重要だと思う。
【スライド 23/45】 「SF小説」をこれまでどれくらい読んできましたか
「いいえ」「わからない」でも、一部には相当SFを読み込んでいらっしゃる方がいますね。これを見ると「わからない」は2つのグループに大きく分かれそうです。本当にSFがわからず、興味もなくて読んでいないグループ。それから、SFをよく読むけれど、おそらく他のジャンルもたくさん読んでいて、自分が特にSFファンなのかどうか判然としないグループ。
【スライド23】 「SF小説」をこれまでどのくらい読んできましたか ▲拡大
「いいえ」「わからない」でもかなりSFを読み込んでいる人がいる。「SF小説好き」ではあるが「SFファン」ではない、ということだろうか。これは私と近い感覚だ。
当然SFファンは読んだ数が多いんですが、SFファンじゃなくても500冊以上読んでいる方がいらっしゃいます(笑)。