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【スライド 3/45】 ミトコンドリアと『パラサイト・イヴ』


【スライド3】ミトコンドリアと『パラサイト・イヴ』
【スライド3】ミトコンドリアと『パラサイト・イヴ』
 僕の本でいちばんよく読まれているのは『パラサイト・イヴ』ですね。ここに示したスライドは高校の教科書からとってきたミトコンドリアの説明文です。ミトコンドリアに関して割かれている分量は5行。僕自身も大学生のときにはこの5行分の知識しかなかったわけですが、大学院に入って、ミトコンドリアの中にある酵素の研究をたまたまやることになりまして、その延長線でミトコンドリアそのものに興味を持つようになりました。そんなとき、角川書店さんとフジテレビさんの日本ホラー大賞が創設されて、「これなら応募してみようか」と思ったわけです。
 一回目の応募作は、折原一さんみたいな倒叙ミステリーホラーですね。大森望さんは下読みで読んでいらっしゃると思いますけれども、これは4次予選で落ちました。それで2回目に『パラサイト・イヴ』を出して、それで大賞をいただいたわけです。




【スライド 4/45】 批判からSFとのコミュニケーションが始まった


  ただ、『パラサイト・イヴ』に関しては、出版後にいろいろな批判もありました。お陰様で部数が出たこともありまして、あまり普段は書評されないような方からの批判もいただきましたし、SFファンの方々からの評価もいただきました。良いといってくださる方もいれば、非常に反発された方がいたのも事実です。
 「これはSFではない」というような意見もありましたし、あとは「誤った意見を科学を広めて金儲けをしている」というようなことをいわれたりもしました。そういった意見は、当時の僕にはすごくきつく聞こえまして、「これはどういうことなんだろう」とかなり悩みましたね。

 その後、『BRAIN VALLEY』という長編小説を97年12月に出すわけですが、そのときに角川書店が宣伝用のホームページを開いて、そちらで掲示板を作ることになりました。僕も当時の担当編集者もウェブは全然知りませんでした。自分で実際に使ってみたのは開設の半年くらい前からです。この掲示板ですが、はじめのうち僕は出るつもりではなかったんです。ところが開設当初はほとんど書き込みがなくて、しょうがないから作者も書き込もうという話になったんですね。するとSF論争になってしまった。『BRAIN VALLEY』では日本SF大賞をいただきましたが、その「受賞のことば」でもやはり歯切れの悪いことを書いています。それでいろいろとSFについて考えるに、まあそれまでSFファンの方々とあまりコミュニケーションをしていなかったことも事実ではあるんですが、どうもコミュニケーションをしようと思ってもなかなかうまくいかない。昔は自分もSFが好きだったはずなのに、どうしてこういう状況になるんだろうか。だからとにかくSFやSFファンをを理解したいという思いが強くありました。

【スライド4】批判からSFとのコミュニケーションが始まった
 【スライド4】批判からSFとのコミュニケーションが始まった

知らない人のために『パラサイト・イヴ』の話を。
高校教科書にあるミトコンドリアの図と、実際のミトコンドリアの顕微鏡写真はかなり雰囲気が違う。この違いがアイデアのもとになっている。

最後のあたりで「利己的遺伝子」の話が出てくる。これをモチーフとしたわけではないが、こちらがクローズアップされてしまった。また、参考図書欄に竹内久美子の本を入れたことが誤解を読んだ。
「ミトコンドリアが意志を持ち……」というフレーズが繰り返し書評欄やインタビュー記事の中で用いられた。瀬名自身が「ミトコンドリアが意志を持った物語である」「ドーキンスの利己的遺伝子説をモチーフにした」と発言したことはないが、慎重さを欠く紹介記事によってネガティヴなイメージが広まった。事の重大さに気づいて以来、気がついた部分にはすべて修正を願い出ているが、聞き入れられない場合もあるし、記事自体をゲラで見せてくれない媒体もある。また、新人の頃は、記者や出版社、編集者の意見に逆らえない(遠慮してしまう)。当時は角川書店がアレンジしたインタビュー依頼は(こちらの意志にかかわらず)すべて引き受けていた時代である。

科学面で批判していた人は、SF関係者だけではない。→既存のスライドへ。
養老孟司・米本昌平の対談、村上龍『ヒュウガ・ウイルス』



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