SFセミナー2025企画紹介
本会企画
ハードSFの新時代 10:40〜11:40
出演:春暮康一(オンライン出演) 宮西建礼 司会:鈴木力
2024年は、日本のハードSFに2冊の傑作が生まれた年でした。春暮康一氏の『一億年のテレスコープ』と宮西建礼氏の『銀河風帆走』です。前者は『SFが読みたい!』のベストSF2024【国内篇】で1位を獲得、後者は日本SF大賞特別賞を受賞しました。本企画では気鋭の作家である両氏をお招きし、ハードSFへの思いや科学観について掘り下げます。(文責・鈴木力)
●春暮康一(はるくれ・こういち)
1985年生まれ。作家。2019年「オーラリメイカー」で第7回ハヤカワSFコンテスト優秀賞を受賞しデビュー。2023年「法治の獣」で第54回星雲賞(日本短編部門)を受賞。著書に『オーラリメイカー〔完全版〕』『法治の獣』(以上ハヤカワ文庫JA)、『一億年のテレスコープ』(早川書房)がある。
●宮西建礼(みやにし・けんれい)
1989年生まれ。作家。2013年「銀河風帆走」で第4回創元SF短編賞を受賞しデビュー。2024年、第1短編集『銀河風帆走』(東京創元社)を刊行、同書で第45回日本SF大賞特別賞を受賞。共著に『京大吉田寮』(草思社)がある。
●鈴木力(すずき・ちから)
1971年生まれ。ライター・SFセミナースタッフ。『銀河風帆走』については解説を、『一億年のテレスコープ』については『SFマガジン』誌上で書評をそれぞれ執筆した。
『ソラリス』コミック化秘話 12:40〜13:40
出演:森泉 岳土 忍澤 勉
意志を持った海に覆われた惑星ソラリスと人類の邂逅を描くファースト・コンタクトSFの金字塔、ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの代表作である『ソラリスの陽のもとに』。これまで2度映画化され、日本でも何度も翻訳・改訳されてきた伝説級の名作SFを、森泉岳土氏が圧倒的な画力と解釈力でコミック化した『ソラリス』(上・下)(以上、早川書房刊)は、コミック表現の新たな地平線を見せてくれる素晴らしいものでした。本企画では森泉氏に、その驚天動地の執筆方法や表現哲学について伺います。
対談のお相手は「『惑星ソラリス』理解のために―『ソラリス』はどう伝わったのか」で第7回日本SF評論賞選考委員特別賞を受賞してデビューした評論家・作家の忍澤勉氏。忍澤氏は映画監督アンドレイ・タルコフスキーの研究家として、タルコフスキーの映画『ソラリス』を通じてレムの原作も深く読み込んできました。
おふたりには対話を通じて、作品『ソラリス』とのそれぞれの個人的な出会い、ビジュアルとしてソラリスを描くことの困難など、レム作品を映像化するということや原作のテーマについての考察など、『ソラリス』について多面的に語っていただきます。(文責:井手聡司)
●森泉 岳土(もりいずみ・たけひと)
1975年、東京生まれ。マンガ家。2010年、月刊コミックビーム9月号に「森のマリー」が掲載されデビュー。主な作品に『カフカの「城」他三篇』(河出書房新社)、『報いは報い、罰は罰』(KADOKAWA)、『セリー』(KADOKAWA)、『村上春樹の「螢」・オーウェルの「一九八四年」』(河出書房新社)、『爪のようなもの・最後のフェリー その他の短篇』(小学館)、『アスリープ』(青土社)、『仄世界』(青土社)、『佐々々奈々の究明』(小学館)。著書に、義父の大林宣彦監督との日々を綴った『ぼくの大林宣彦クロニクル』(光文社)がある。
●忍澤 勉(おしざわ・つとむ)
1956年生まれ。「『惑星ソラリス』理解のために―『ソラリス』はどう伝わったのか」で、第7回日本SF評論賞の選考委員特別賞。大幅に加筆の上「『惑星ソラリス』理解のために」の1と2として、「SFマガジン」(早川書房)二〇一二年6〜8月号に掲載。「ものみな憩える」で、第二回創元SF短編賞の堀晃賞。『原色の想像力2』(東京創元社)に所収。「TH」No63(アトリエサード)や「層」(北海道大学大学院文学研究科 映像・表現文化論講座編)に、タルコフスキー論を寄稿。その他。著書は『終わりなきタルコフスキー』(寿郎社刊)。SFPW編集部員。
SFファンのためのジャパン・ホラー再入門 13:50〜14:50
出演:笹川 吉晴 千街 晶之 司会:日下 三蔵
宝島社からムック『このホラーがすごい!』が刊行され文芸誌でも特集が組まれるなど、今また日本のホラー小説が大きく盛り上がりつつあります。モキュメンタリー形式の流行、ネット文化との連動などこれまでの小説にない動きの背景には何があるのでしょうか。そして隣接ジャンルであるSFとの相互作用は。本企画ではホラーに詳しい方々にご登壇いただき、ホラーの新しい潮流を伺います。(文責・鈴木力)
●笹川吉晴(ささがわ・よしはる)
1969年生まれ。文芸評論家。ホラーに造詣が深く、『SFマガジン』でホラーの書評を長年務める他、『SFが読みたい!』(早川書房)でも国内&海外ホラーベスト10&総括欄を担当する。著書に『クトゥルフ神話検定 公式テキスト』(共著・新紀元社)がある。
●千街晶之(せんがい・あきゆき)
1970年生まれ。ミステリ評論家。1995年「終わらない伝言ゲーム――ゴシック・ミステリの系譜」で第2回創元推理評論賞を受賞。2004年『水面の星座 水底の宝石』(光文社)で第4回本格ミステリ大賞(評論・研究部門)・第57回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)を受賞。他の著書に『ミステリから見た「二〇二〇年」』(光文社)、編著に『ホラー・ミステリーアンソロジー 魍魎回廊』(朝日文庫)などがある。
●日下三蔵(くさか・さんぞう)
1968年生まれ。フリー編集者、SF・ミステリ研究家。2019年、編著『筒井康隆、自作を語る』(ハヤカワ文庫JA)で第50回星雲賞(ノンフィクション部門)を受賞。他の著書に『日本SF全集・総解説』(早川書房)、編著に『横田順彌 明治小説コレクション』(柏書房)、『筒井康隆コレクション』(出版芸術社)などがある。
伊藤典夫のデンジャラス・ヴィジョン 〜4:9:11のモノリス〜 15:00〜16:00
出演:鏡 明 高橋 良平 大森 望 樽本 周馬 司会:鯨井 久志
「二〇〇六年から刊行告知していた『伊藤典夫評論集成』、最後の告知です。」
2025年2月、『SFが読みたい! 2025年版』での高らかな宣告に、ある者は期待に胸を躍らせ「『評論集成』が――おお! おお! おお!」と叫び、またある者は繰り返された「冷たい方程式」から逃れられるはずがないと疑いの表情を浮かべた……。
全SFファン待望の本書の著者伊藤典夫さんは、翻訳家として第一人者であると同時に、日本の英米SF受容に絶大な影響を与えてきました。
本パネルでは、1986年に予告された東京創元社版『伊藤典夫SF評論集』編者の鏡明さんと高橋良平さん、翻訳家でありSF界のスポークスマンとしても後継者と呼べる大森望さん、本書の編集担当者の樽本周馬さんをお迎えして、伊藤さんと同じく早くから翻訳も評論も活躍されている鯨井久志さんの司会でお贈りします!(文責 代島正樹)
※当日は会場で『伊藤典夫評論集成』(国書刊行会)の販売を行います。ご希望の方は現金のご用意をお願い致します。
●鏡 明(かがみ あきら)
48年生まれ。作家、翻訳家、評論家。著書に『不確定世界の探偵物語』、『二十世紀から出てきたところだけれども、なんだか似たような気分』『ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた』、訳書にピーター・S・ビーグル『最後のユニコーン』など多数。
●高橋 良平(たかはし りょうへい)
51年生まれ。SFおよびSF映画評論家、出版史研究家。《月刊スターログ 日本版》副編集長、野田昌宏『「科學小説」神髄』編纂、ジョン・クルート『SF大百科事典』日本語版監修、伊藤典夫翻訳SF傑作選『ボロゴーヴはミムジイ』『最初の接触』編集など多数。
●大森 望(おおもり のぞみ)
61年生まれ。翻訳家、書評家、アンソロジスト。著書に『21世紀SF1000』『新編 SF翻訳講座』、訳書にテッド・チャン『息吹』、劉慈欣『三体』(共訳)、編著に《年刊日本SF傑作選》(共編)、《NOVA》など多数。「ゲンロン大森望SF創作講座」主任講師。
●樽本 周馬(たるもと しゅうま)
74年生まれ。国書刊行会編集部。担当書籍に〈未来の文学〉シリーズ、〈ドーキー・アーカイヴ〉シリーズ、武田崇元・横山茂雄『霊的最前線に立て! オカルト・アンダーグラウンド全史』、リチャード・マグワイア/大久保譲訳『HERE ヒア』など。
●鯨井 久志(くじらい ひさし)
96年生まれ。翻訳家、書評家。「カモガワ編集室」主宰。訳書にジョン・スラデック『チク・タク×10』。言語実験SFの翻訳史を伊藤典夫など翻訳家の訳業から論じた「サイエンス・フィクションのなかの言語実験たち」を作品社のnoteで連載中。
時間 | |
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10:00 | 開場 |
10:30 | 開演 |
10:40〜11:40 | ハードSFの新時代 |
11:40〜12:40 | 昼休み,サイン会 |
12:40〜13:40 | 『ソラリス』コミック化秘話 |
13:50〜14:50 | SFファンのためのジャパン・ホラー再入門 |
15:00〜16:00 | 伊藤典夫のデンジャラス・ヴィジョン |
16:00 | 終演 |