特別企画:SFセミナー版「これがSFだ! 2003



 昨年発表された「本」の形態をとった作品(小説、マンガ、評論など)のうち、自分が「SFとして一番おもしろかった」「これはぜひみんなに読んでもらいたい!」と思った作品をひとつだけ挙げてもらうアンケート企画です。

 「これは!」と思う作品を挙げた方、おもしろいコメントを寄せてくれた方の中から、抽選で記念品を差し上げます。

 ちなみにアンケート企画ですので、投票数が多かった作品に対する表彰などはありません。あらかじめご了承下さい。

 事前予約をされた方は、当日持参される予約受付はがき(もしくはDMが入っていた封筒)にご記入の上、当日受付にお出しください。

 ネットで参加登録をされる方はその際に、当日参加の方は会場にて、それぞれご記入いただけます。

 では以下に、スタッフの「これがSFだ!」を挙げておきます(提出順)。それから、海外・国内のSF作品リスト(データ提供:星敬 氏)も挙げておきます。ご参考まで。

*2002年度新刊海外SF作品リスト(発行奥付順)

*2002年度新刊国内SF作品リスト(発行奥付順)





『地球礁』 R・A・ラファティ、河出書房新社、2002/9
コメント:
 5篇を選ぶのは難しいが、1篇だけならば簡単。これしかありません。ラファティを読んだあとには、「これがSFだ!」なんてことはもうどうでもいいのだ。逆説的だけど、それくらい思わせてくれる作品が出てこないなら、SFを読みつづける甲斐はないとぼくは思うね。(牧

『スーパー・カンヌ』 J・G・バラード、新潮社、2002/11
コメント:
 SFといえば、J.G.バラードでしょう。SFと言われる作品の登場人物は現代人ばかり。未来人が未来の価値観で登場するのはバラードぐらい。でも、未来といっても、10年ぐらい先なんだな、これが。(永田)

『狂人の太鼓』 リンド・ウォード、国書刊行会、2002/10
コメント:
 まさかの日本での出版。ホントに嬉しかったです。ずっと好きな作家でしたが、手に入れるのがとても困難なので、人に紹介するにもカットのみでした。是非ともこの機会に、ご購入していただきたい本です。(牧

『イリーガル・エイリアン』 ロバート・J・ソウヤー、早川書房、2002/10
コメント:
 人類とエイリアンがファーストコンタクト、なのに出てきた異星人が殺人事件の容疑者になってしまって、アメリカの片田舎で裁判。こんな馬鹿馬鹿しい話をきちっと法廷モノに仕上げてしまうあたり(しかもSF的に大風呂敷を広げて終わるあたり)、やっぱりソウヤーはすごいなあと思う次第です。(向井)

『フルメタル・パニック』 賀東招二、富士見書房、2002/6に11巻まで刊行
コメント:
 98年から現在も続刊中だが、02年・03年にアニメ化。たぶん今が旬ということで。アフガンゲリラ出身で、対テロ組織の有能な傭兵として人型兵器を操る「戦争ボケ」少年と、超元気な女子高生との、京王線沿線ドタバタ高校生活。おたく好みのキャラが正確に配置されながら、我々の現実とは微妙にズレた超兵器の存在する世界の構造を、物語の動因として意図的に扱う。
 物語はそんな世界の謎をはらんだまま拡大中、今後については待つのみ。しかし何より、武器・兵器やゲリラ戦術への適度にマニアックな記述が楽しい。楽しすぎる。(尾山)

『海辺のカフカ』 村上春樹、新潮社、2002/9
コメント:
 『幼年期の終わり』的 UFO との邂逅から、入り口の石=モノリスに導かれ、四国山脈の山中深くにスターゲートが開くまで――本書のモチーフは明らかにクラーク的ビジョンの換骨奪胎あるいは純文学への引き戻しである。ジョニー・ウォーカーさんはオーバーロードであり、ナカタさんはHAL9000なのかもしれない。(浜田)

『幻の小松左京=モリ・ミノル漫画全集』 小松左京、小学館、2002/2
コメント:
 知の巨人、小松左京のSF漫画を復刻。なんたって「日本の50年代SF」だから、SFの原形質とでも言おうか、エッセンスがプンプンなんである。ま、途中スッ飛ばしちまえば早い話、結論は「これがSFだ!」

 …と書いてよくよく見たら、『ぼくらの地球』の出版が1950年で(アメージング・ストーリーズ日本語版と同じ年!)、『イワンの馬鹿』『大地底海』が51年というのだから、50年代の初期も初期。いやはや、モリ・ミノル先生こと大学生の小松左京青年よ、恐れ入りました!(代島)

『海を見る人』 小林泰三、早川書房、2002/5
コメント:
 こういうのって、ついつい狙ってしまうわけです。「去年一番インパクトあったのは『かまいたちの夜2』だな」(ゲームはダメです)「ううむ。『モリ・ミノル」はダイジマンに先越されちゃったしなー」(もちろん同じ作品でもいいんですヨ)「いっそのこと『串やきP』の2巻というのはどうだろう」(去年出版されたものであれば、途中でもかまいません)……などといろいろ考えたのですが、「これをSFと言わずして何をSFという」。小林泰三が描く、宇宙で「生きる」人々が好きです。(柏崎)

『傀儡后』 牧野修、早川書房、2002/4
コメント: 
 考えたあげくにSF大賞受賞作とはあんまりだと我ながら思いますが、1冊にしぼるとなるとこれになってしまいます。
 SFでなければ描けないものに「テクノロジーの進歩による人間の内面の変容」がありますが、それがこの作品には感じられました。テクノロジーといってもこの作品では「社会を一変させる大革新」としては扱わず、あくまで「日用品として普及しちゃいました」という描き方で、それがよいと思います。
 それと、作品を破綻させかねない「過剰さ」がたまりません。結構大ネタもあるのに、それが見えないぐらいに細部が気になる。(新井)

『航路』 コニー・ウィリス、ソニー・マガジンズ、2002/10
コメント: 
 しばらく「ハリ・ポタ」に巻き込まれていた私にとって久々に手ごたえのある本でした。実はもう一つあるんだけど、最後までどちらにしようか迷い(今でもこっちでいいの?と迷ってはいますが)二つを比較してこちらにしました。選んだ理由はストーリーの重さ、構成の確かさ、といったところかな。

 もう一つどうしてもこちらを選ばざるを得なかった理由があります。母が私を生む前に臨死体験をしているということです。小さい頃から何回か聞かされていた「ママが一ぺん死んで生き返って来た話」「もしそのまま死んでいたらあなた達は今ここに生まれていない話」航路に書かれているのはただのフィクションではなくもしかしたら母が体験したことかも?と思わせるものがあったわけです。
そう思わせられたことにこれがSFだ!と叫びたいです。(立花)

『竜とわれらの時代』 川端裕人、徳間書店、2002/10
コメント: 
 ああ、なぜ去年のうちに読んで某アンケートに反映させなかったのか、と後悔した(沢山の!)本のうちの一つ。人は何故化石発掘に惹かれるのか、科学と宗教に融和は訪れるのか、そしてアメリカ社会の深い闇とは……。みっちり詰まった古生物学への愛と文明批評がクロスオーバーし、重層的でハジケぶっ飛んだ驚天動地の物語を奏でる。SFのひとつの進化形態にして、万人向けボーダージャンル文芸の傑作。
 あえて言おう、SFファンなら読め!(井手)

『7SEEDS(7シーズ)』 田村由美、小学館、2002/4,10に1,2巻刊行
コメント: 
 1巻では異世界秘境探検物風でしたが、2巻に入ってだんだんSFしてきました。天変地異の後どのくらいの年月が経っているのか?人類は滅亡しちゃったのか?日本中でたった35人のコールドスリープメンバーに恋人同士が入っているのは偶然なのか?
 まだまだ謎だらけでですが、今後の展開が期待です。このままSFになるかどうかは読者の反応に左右されそうなので、盛り上げて下さい(笑)(山口)

『ふたつのスピカ』 柳沼行、メディアファクトリー、2002.1,4,11に1,2,3巻刊行
コメント:  
 それは西暦2010年のこと、市街地に墜落した日本初の有人宇宙探査ロケット「獅子号」は、多くの死傷者を出す事故を起こした。その事故で母親を失った主人公・アスミは、彼女にしか見えない幽霊「ライオンさん」と共に、いつしか宇宙飛行士を目指す。
 もし、少女の目指すものが「宇宙」でなくて何か別の大きい夢だったとしても、きっとこの物語はいい話になったと思う。けれど、宇宙を映す少女の瞳はあまりにもまっすぐで、その視線が目指す先に「宇宙」があるということ自体に、私は思わず胸を踊らせてしまった。宇宙を夢見る、その想いのなんと力強く美しいことか。そう、再確認できるお話です。(田中)

『グラン・ヴァカンス 廃園の天使T』 飛浩隆、早川書房、2002/9
コメント:  
 本書についてはただ一言、――SFファンやめないでよかった!
衝撃の出会いと、長い音信不通と、悦ばしき再会と。まことSFを読み続けることは、人生そのものに他ならない。(鈴木)

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