'96 昼のプログラム最新情報 - 今年もGWはSFセミナーで!


10:30-11:20

ターボ・リアリズム        ■講演/大野典宏、聞き手/中村融

 ── 停滞の時代とサイバーパンクが生み出した原点回帰小説 ── 
 ソ連邦崩壊後、SFから派生したターボ・リアリズムは、周到に準備され、計画的に作り出された、完全に人工的な形式です。ターボ・リアリズムはSFであり、サイバーパンクの影響なくしては生まれませんでした。そして、SFというジャンルだけには止まらず、ロシア独自の幻想文学「ファンタスティカ」の系譜の中に、確固たる地位を確立するまでに至っています。
 ロシアSF研究家としてご活躍中の大野典宏氏を講師に、英米SF翻訳・研究家の中村融氏を聞き手にお迎えして、この、小説の新たなる表現形式を模索し、同時にファンタスティカの原点への回帰することを目指す、相反するベクトルを併せ持った不思議なジャンル──ターボ・リアリズムについて考察し、ジャンルSFの展望を考えていきます。

ロシアSFホームページ


12:30-13:20

想像力という名のシヴァ      ■パネル/大宮信光、岡田斗司夫

 ハルマゲドン、マインド・コントロール、「コスモ・クリーナー」……。昨年、様々なメディアを通じて暴かれたオウム真理教の実態は、おそろしくグロテスクであると同時に、SFに親しんできた者にとっては既知の光景・言葉でもありました。なぜ彼らは、暗澹たる殺伐に至る道において、SFやアニメからの物語を、語彙を、つぎはぎしなければいけなかったのでしょうか。それとも、つぎはぎしていった果てが、あの荒廃だったのでしょうか。いずれにせよ、SFを楽しむ者によって肯定されてきた「想像力」は、現実に他者を傷つける、危険きわまりない代 物として、世間に認識されてしまいました。
 独自の問題意識で多様な現象に切り込まれているSF乱学者の大宮信光氏と、東大でサブカルチャーを中心としたメディア論を展開しておられる岡田斗司夫氏をお迎えして、この事件がもたらしたものとSF的想像力の可能性について考えてみたいと思います。

13:30-14:20

くたばれ、SFイデア主義!    ■講演/梅原克文、聞き手/上岡雅史

 『二重螺旋の悪魔』で衝撃的デビューを飾り、『ソリトンの悪魔』で大ブレイクを果たした梅原克文氏。そのエンターテインメント性で多くの読者を引きつけ、ドライブ感はジェットコースターに例えられました。そして、その設定において、本格SFとしても高く評価することができるでしょう。ところが、これらの作品はSF界よりも、ミステリー、ホラーの分野で、より多く取り上げられ、高く評価されたのです。
 冬の時代と言われて久しいSF。その原因は何か。果たして、その行方は。SFが取るべき道は。現在進行形で活躍、実践し続ける梅原氏が、SFを愛する心で、SF冬の時代の原因に迫り、鋭くメスを入れます。
 活字SF界を汚染する「SFイデア主義」とは何か。梅原氏独自の「ヴェルヌ&ウェルズ原理主義論」「梅原克文の法則」とは何か? ご期待ください。


14:30-15:20

『新世紀エヴァンゲリオン』の世界  ■パネル/庵野秀明、小黒祐一郎、大森望

 昨年10月から今年3月にかけてテレビ東京系で放映された『新世紀エヴァンゲリオン』は、アニメファンのみならずSFファンの間にも圧倒的な反響を呼び起こしました。 観る者を否応無しに引き込むストーリイ展開、質の高い絵、従来のアニメの常識を打ち破る演出など、大ヒットの要因はいくつも挙げられますが、やはりSFファンをひきつけた最大の理由は、その背後に「人類補完計画」に代表される壮大なビジョンが垣間見えた点に求められるでしょう。
 本放送はすでに最終回を迎えてしまいましたが、『エヴァンゲリオン』の世界の全体像は、いまだ謎に包まれています。本パネルでは、この作品の脚本・監督を担当された 庵野秀明氏、LD版のライナー・ノートを執筆されている小黒祐一郎氏に、『エヴァンゲリオン』の世界を語っていただきます。

エヴァンゲリオンとは


15:40-16:30

『アインシュタイン交点』をめぐって  ■講師/伊藤典夫

 ディレーニイの『アインシュタイン交点』の翻訳が、この6月に早川書房より刊行されます。訳者はもちろん伊藤典夫さん。氏がこの作品を「SFスキャナー」で紹介したのが1968年ですから、そのつきあいは実に30年近くになります。重層的な構造を持ち、現代文学として読んでも出色の『アインシュタイン交点』。伊藤さんは、その価値と意義を高く評価する一方で、当時「いったい、これがSFなのか」という根本的な疑問を提出なさっています(SFM1971年12月号、「エンサイクロペディア・ファンタスティカ」)。この問題作を訳し終えられた現在、はた して氏はその疑問に対する<解答>にも到達したのでしょうか。今回のSFセミナーでの講演では、『アインシュタイン交点』論を越えて、伊藤さんがこの30年間、自分の中で問い続けていたSF観、小説観が披露されるはずです。
御出演の先生方の敬称は略させていただきました。

なお、一時期一部に予告の出ました今日泊亜蘭先生の講演は、残念ながらお流れとなりました。楽しみにされていた方、ごめんなさい。その代わり、夜間プログラムで「『光の塔』の部屋」をやります。